にのだん社会保険労務士事務所

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にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和4年10月号(No.35)

【社会保険適用拡大改正がスタートしました】

 前から法改正情報としてお伝えしていた社会保険適用拡大のルール変更が令和4年10月からスタートしました。

 本来、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入条件は法人で働く従業員が、そこの会社で正規社員として働く従業員と比較して週の労働時間・月の労働日数ともに正規社員の3/4以上(例:正規社員が週の所定労働時間が40時間、月の所定労働日数が22日の場合、週労働時間30時間以上かつ月労働日数が17日以上)なら社会保険の被保険者として強制加入するのが原則でしたが、平成28年10月からは原則の社会保険被保険者数が501人以上の事業所規模であれば、短時間の従業員さんでも強制的に被保険者になる社会保険適用拡大の制度がスタートしました。そして今回、令和4年10月から原則の被保険者数が101人以上の事業所であれば、以下の条件を満たす従業員は強制的に社会保険に加入することになります。(令和6年10月からは51人以上に拡大)

①週の所定労働時間が20時間以上

②月額88000円以上(ただし賞与や残業代、皆勤手当、通勤手当、家族手当を含まない)

③継続して2ヵ月を超えて使用される見込み

④学生でないこと(ただし休学中、大学の夜間学部、高等学校の定時制、卒業後同事業所への就職が決定している卒業見込証明書を有する学生は除く)

 特に週20時間以上で勤務しているパートさんは多く見受けられますので、今回社会保険適用拡大改正により該当する事業所は社会保険取得の手続き(扶養家族がいれば扶養追加の手続き)が必要ですが、何より事業所で勤務する従業員に今の労働条件なら社会保険に加入しなければならないという事実が正しく伝わっているかが重要となります。労働条件変更を希望する従業員もいるかもしれませんので、トラブルが起こらないためにも事前の話し合いが必要になるかもしれません。

 あと、注意しなければならないのは原則の被保険者数が月ごとに100人を超えたり超えなかったりする事業所です。日本年金機構より今後、過去1年間の中で6ヵ月以上101人以上の被保険者数が確認された事業所に対し「○月1日から適用拡大対象事業所となります」というお知らせが直前になって届きます。つまり会社のほうで令和4年10月から適用拡大事業所になると思っていても、前述したとおり、遡って100人以下の月があり、案内が届いていなければ現時点では原則の3/4以上の条件を満たさなければ、週20時間以上勤務するパートさんも社会保険に加入することができないという点が今後注意しなければならないポイントではないでしょうか。

【コロナ禍に配慮した接客とは】

 私は以前から、過去の食品スーパー勤務経験のせいか「接客」にこだわり何度か「たすき」にもテーマに取り上げることが多々ありました。昨年はあまりにも不愛想な店員の態度に大人げなく怒りを表すこともありました。

 先日、大手総合スーパーで20年以上勤務している妻の弟に会う機会がありました。彼は大学を卒業後、現在の会社に就職し、東日本エリア内において数年周期で広い範囲の転勤を現在も続けている接客業のプロです。最近私が感じている接客に対する考え方を彼に伝えると「確かに今の接客はあまりお客さんに声掛けをしないようになった」と言ったあと「それは、コロナがまん延し始めてから会社の方針として過度な接客をしないように通達されているのも大きな原因だと思う」と言いました。

 私は十数年前の勤務経験の感覚で接客に対する不満を感じていましたが、現場サイドからすれば声を出す接客により「コロナ禍でどうして大きな声で接客するのか?」「従業員の声掛けでコロナに感染したらどう責任をとるのか?」といった過度なクレームにより現場は対応に苦慮した事実を彼から改めて聞かされました。私のように不愛想と言ってクレームを言う者、それとは逆に接客からコロナに感染する可能性があると敏感に反応してクレームを言う者、現在におけるコロナ禍での息苦しさやそれに伴う接客業の難しさを思い知らされることとなりました。ギスギスとした閉塞感が今の日本では長い間続いているのかもしれません。

 しかし、その中でも私はあえて「コロナ禍に配慮した接客」について述べたいです。確かに過度な声掛けは敏感なお客さんからすれば不快感をもたらすことは理解できます。とはいえ私のように接客業を経験した者からすれば、今のように店の中を通る店員さんが無言で目の前を素通りしたり、レジで「いらっしゃいませ」も言われないことが時々あるのは寂しい限りです。不快な思いをするくらいならセルフレジで機械の接客を受けるほうが気分的に楽かもしれません。

 私ならどうするか。例えば店内を通る時、あえて近いところからではなく、距離を保ちながら「いらっしゃいませ」と小さく声掛けをする。この目的は不愛想な店員と思われないためだけではなく、お客さんが商品を探している時、店員に声を掛けやすい状況を作る効果があるのです。目の前を接客することなく素通りする店員に客は声掛けしにくいと私は思います。コロナ禍の状況でもソーシャルディスタンスに配慮したコミュニケーションにより、店員と客との心の距離は今の時代だからこそ近くなるのではないでしょうか?

 そして、これは私が副店長の時に度々行っていたことですが、駐車場で放置された買い物カートを回収しに行く。その時同時にお客さんが返そうとする買い物カートや買い物かごをこちらから近づいてもらいに行く。この時ほぼ100%のお客さんは「ありがとう」とか会釈を交わしてくれました。お客さんの反応が嬉しいと感じることが出来れば、さらに喜んでもらおうと店員が行動するのが接客の本来の姿かもしれません。

 コロナを理由に接客に対して何もかも制限するのではなく、最低限出来る範囲の中でお客さんに感動を与えられる接客を含めた行動をそろそろ復活させるべきではないかと私は余計に感じてしまいます。

~最後までお読みいただきありがとうございました~